二村です。
前回の記事では、新宿区保健所衛生課食品保健係へ直接伺い、手洗い専用シンクや「緑色の液体石鹸」、再汚染防止設備についてご紹介しました。今回はその続編として、飲食店を開業する際に見落としがちな設備基準について、実際に保健所で確認した内容をもとにまとめました。
これから飲食店を開業される方はもちろん、営業許可の更新が近い方や店舗の改装を検討している方も、ぜひ参考にしてください。
1.カウンター入口の仕切り

バーなどの飲食を伴う店舗では、お客様と厨房スペースの区分けが重要です。厨房は衛生的な作業区域として管理する必要があるため、お客様が自由に立ち入れない構造であることが求められます。
扉で完全に区画しなければならないわけではありませんが、バッタンコ(スイングドア)などを設置し、厨房との境界を明確にしておくことが大切です。
特に小さなカウンターのみの店舗では、カウンター下をくぐるタイプでもバッタンコは必要です。スムーズに開閉できるよう、事前に十分な動線を確保したレイアウトになっているか確認しておきましょう。
2.天井配管の処理・厨房天井の施工

最近では、客席の天井をあえてむき出しにした「スケルトン天井」の店舗が増えています。
客席部分については、天井高やデザイン性を重視して天井をむき出しにすることも可能ですが、厨房部分については考え方が異なります。厨房は、天井・壁・設備が「平滑で清掃しやすく、ホコリや虫が侵入しにくい構造」であることが求められます。
そのため、多くの保健所では、厨房部分の配管やダクトを露出させず、天井を仕上げて塞ぐことが必要とされています。配管をむき出しにすると、ホコリが蓄積しやすく、結露やカビの発生原因にもなります。また、配管まわりの隙間は、害虫やねずみの侵入経路になる可能性もあります。
調理をしない場合は基準が緩和されることもありますが、スケルトン仕様で天井をむき出しにする場合は、自治体や保健所によって判断が異なるため、工事前に必ず事前相談を行いましょう。
3.食器棚は扉付きが基本

洗浄後の食器やグラスは、ホコリや害虫などによる汚染を防ぐため、衛生的に保管する必要があります。そのため、食器棚には扉を設置し、使用しないときは閉めて保管できる構造が求められます。
オープン棚やワイングラスホルダーは見た目がおしゃれですが、食器にホコリが付着しやすく、衛生面で課題があります。カウンター内に扉付きの収納を基本として計画すると安心です。
ちなみに、固定されていないプラボックスのような収納について保健所の方に確認したところ、可動式のものは推奨していないとの回答でした。
4.冷蔵設備の温度管理(温度計は必須)

冷蔵庫や冷凍庫は設置するだけでなく、適切な温度管理を継続することが重要です。保健所では、庫内温度を確認できる温度計の設置が求められています。温度計が外から見える位置にあること、日常的に温度確認ができることがポイントです。
2021年6月の食品衛生法改正以降は、HACCPに沿った衛生管理が制度化され、温度管理の重要性はさらに高まっています。業務用冷蔵庫(コールドテーブルや冷蔵ショーケース)は初めからついているケースが多いですが、家庭用冷蔵庫を店舗で使用する場合は、マグネット式の温度計を準備しておくことをおすすめします。
5.トイレの手洗い設備

トイレには、利用者が適切に手洗いできる設備が必要です。液体石鹸やペーパータオルを設置し、衛生的に利用できる環境を整えましょう。と言いたいところですが、ペーパータオルを便器の近くに置くことはおすすめしません。ペーパータオルが原因となる排水詰まりによる漏水が多く、便器のスペースが仕切られている場合や便器との距離が離れている場合のみ使用しましょう。
また、手洗い設備は十分な給水能力を備え、利用しやすい大きさであることが求められます。さらに、手洗い後の再汚染を防ぐため、センサー式などの水栓を採用する店舗も増えています。トイレはお客様が店舗全体の衛生状態を判断する重要な場所です。厨房だけでなく、トイレを含めた店舗全体で衛生管理を考えることが大切です。
工事前の「保健所への事前相談」が重要
上記5点のほか、直結給水ではない場合に必要となる水質検査成績書など、飲食店営業許可にはさまざまな確認事項があります。私自身も、新宿弐丁目横丁の開業前には計画図面を持参して保健所へ相談し、細かな調整を行いました。
飲食店営業許可の基準には全国共通の考え方がある一方で、施設基準の運用は自治体や保健所によって異なる場合があります。工事完了後に設備の変更が必要になると、想定以上の時間や費用が発生してしまうこともあります。計画段階で迷う点や疑問点があれば、必ず管轄の保健所へ相談することをおすすめします。
今後も、現場で役立つ最新情報を発信してまいります。


