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2026.08.06

「その水漏れ、ウチの仕事ですか?」不動産屋が悩む管理方式の境界線―集金管理と更新管理の違い

ある日、ビルの大家さんがご相談に来られました。

「新規で賃貸募集をしたいので相談したい」

こういうご相談があると、賃料等の月次費用や敷金・礼金などの新規条件案をご提案して、条件が決まり次第募集を開始します。その後は入居申込時など必要なタイミングで、集金管理をする「集金管理」なのか、集金管理をせず大家さんで日常管理を行う「更新管理(準管理)」なのか、という管理形態を決めていただきます。

問題は、ここからです。

「とりあえずウチに連絡」問題

先日、あるテナントさんからこんな連絡がありました。

「上の階で水漏れがあったみたいなんですが、どこに連絡すればいいですか?」

そのビルの大家さんは、更新管理のご契約です。賃料の集金も、日常のクレーム対応も、弊社とは契約範囲外。ですので「大家さんへ直接ご連絡ください」と伝えしました。

ここまでは、よくあることです。

ところが数日後、今度は大家さんから弊社に連絡が来ます。

「テナントから水漏れの件で連絡があったんだけど、どう対応したらいいですか?」

…はい、来ました。

「弊社は日常管理を請け負っておりませんので」とお伝えしたいところですが、そうすると突き放したような感じの悪い空気になってしまいます。結局、対応についてアドバイスをすることに。具体的には、「まずは上の階のテナントに原因があるのか確認すること、それでも原因がわからない場合は大家さんで業者等を手配する必要が出てくること」を伝えました。

数時間後、また大家さんから連絡が。

「上の階のテナントさんに連絡してるんだけど電話に出ません。」

…なるほど、そう来るか。

結局、弊社がお店(上階のテナント)の扉に「フタミ商事に電話するように」という内容のメモを挟むことになり、

「製氷機の排水ホースから水漏れしてたみたいで…」

という連絡がお店(上階のテナント)の方からありました。

気づけば、大家さんと上下階のテナントさんという、三者の間を取り持つような形になっている。このように、契約上の業務範囲を超えた対応を、いつの間にかしていることがよくあります。

「サービス対応」が積み重なると境界線がなくなる?

いいんですいいんです、こういうことから信頼が生まれていくんですから。新規や更新という手数料をいただける業務は、どの不動産会社も請け負いたい業務です。だからこそ、親の代からのお付き合いのある大家さん等に対しては、日常対応の部分まで「サービス対応」で引き受けてしまう。これは、弊社に限った話ではなく二代目三代目不動産屋のあるあるのようです。

ただ、これが積み重なると、大家さんの中に「頼めば対応してくれる」という前例ができあがります。一度できた前例は、なかなか消えません。気づけば、管理業務の境界線はどんどん曖昧になっていき、連絡の中継程度だったものが、なんでも無償で対応することになります。

改めて”2つのプラン”の違いを整理してみる

言葉で説明する前に、まずは表で見てみましょう。

項目集金管理プラン更新管理(準管理)プラン
新規手続き
(募集・申込・契約・保険等)
更新手続き
(更新の条件交渉・契約等)
再契約手続き
(再契約の条件交渉・契約等)
解約手続き
(受付・精算・空室点検等)
賃料等の集金
賃料等滞納時の督促
クレーム・要望等の受付
修繕の対応
管理委託料(集金等管理)集金賃料等の5%(税別)
業務委託料(契約締結時)賃料の1ヶ月分(税別)賃料の1ヶ月分(税別)
更新・再契約事務手数料契約書による契約書による
緊急対応△(別途費用ご請求)

集金管理の大家さんには、集金賃料の5%(税別)という管理委託料をお支払いいただいています。その対価として、集金・督促・クレーム・修繕対応といった日常管理を、こちらが代行しているのです。もし、契約中は更新手続きのみを行う更新管理の大家さんにも同じような対応をサービスでしてしまったら、きちんと管理委託料を払って契約してくださっている大家さんとの間に不公平が生まれます。

簡単な見分け方としては、家賃を大家さんに直接振り込んでいる場合は更新管理。逆に家賃が弊社などの不動産会社を経由して集金されている場合は、集金管理ということになります。この一点を押さえておくだけでも、「この物件はどちらのプランだったか」を瞬時に判断しやすくなります。

「契約書があるかないか」という根本的な違い

そもそも今、弊社では管理委託契約書を交わしているのは、集金管理の大家さんだけです。更新管理の大家さんとは、契約書を取り交わしていません。契約書がある集金管理プランは、業務範囲も費用も書面できちんと合意されています。一方、更新管理は書面がありません。この境界線をはっきりさせたいなら、業務範囲を明文化する意味でも、どちらのプランでも契約書を交わすことを検討すべきかもしれません。

説明したはずなのに伝わっていない

テナントさん側にも似たようなことが起きます。契約時には「自主管理なのでトラブルが等があった場合は大家さんへ直接ご連絡ください。」と、重要事項説明の「管理の委託先」の項目でお伝えしています。

それでも、いざ水漏れやトラブルが起きると、テナントさんはまず不動産会社に連絡してくる方も多いです。これはテナントさんが悪いとも言えず、契約時に一度聞いただけの情報をずっと覚えている方が難しいのです。困った時にはまず「知っている人」に頼るので、それが不動産会社なのか、大家さんなのかは、正直あまり意識されません。

「相談には乗ります」の大切さ

不動産屋はまちの御用聞きのような存在であるべきだと思います。

先日も、とある物件で「ハエが飛んでいて室内からネズミの死臭のようなものがする」と連絡があり、大家さんにネズミ業者と点検口を開けるための施工業者を紹介してすぐに対応してもらいました。大家さんには更新管理であることを告げ、工事費に少し手数料を上乗せして請求する旨を伝え承諾していただきました。

自社物件や集金管理物件で対応に追われている時には難しい場合もありますが、基本的には「更新管理でも相談していただいて構いません」という姿勢は変えないようにしています。そのうえで、必要に応じて専門業者をご紹介したり、対応方法をアドバイスしたり、場合によっては今回のように業務としてお手伝いし、その分の費用をいただくこともあります。

「困ったときに最初に相談できる不動産屋」でありながら、「どこまでが契約上の業務なのか」もきちんとご理解いただく。そのバランスを大切にしながら、これからも大家さんやテナントさんをサポートしていきたいと思います。